『CONNECT+』Vol.5:特別インタビュー
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掲載日:2024年5月24日

東北のディープテック企業 地域課題解決への挑戦
―青森りんごに新たな価値を―
東北を舞台に取り組むディープテック
近年、ディープテックが起業テーマとして注目を集めている。
これは科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組みを指す言葉だ。
まさに今、東北のディープテック企業として奮闘しているのがappcycle(アップサイクル)株式会社(本社:青森県青森市。以下、同社)。
りんごの生産量日本一を誇る青森県で、2022年5月、りんごのアップサイクル(=本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること)を目的として設立された。
RINGO-TEX(リンゴテックス)の開発
同社では、廃棄りんごやりんごを加工した後に残る皮や絞りかす(残渣)を活用したヴィーガンレザー「RINGO-TEX(リンゴテックス)」の開発を行っている。
RINGO-TEXは、りんごの残渣を加工したものを原料として生産する合成皮革で、バッグや財布、帽子などに利用されている。
社会課題の解決と経済的な成長の両立を目指すインパクトスタートアップを取り巻く現状や、東北でビジネスを起こし推進していく意義について、代表取締役の藤巻圭さんに話を聞いた。
ANAとコラボ RINGO-TEXを通して共創の輪が広がる
青森市出身の藤巻さん。SDGsの重要性が叫ばれ、多くの企業がエシカル製品に注目する今、りんごをアップサイクルした製品を世界に広め、青森りんごの魅力を伝えたいと考えている。
事業に共感する人や企業と共創しながら認知を拡大し、そこで得た利益を青森に還元することで持続可能な農業を推進したいという。
もともと藤巻さんは、地元の専門学校を卒業後に上京し、東京で美容師や医療関係の仕事をしていた。
ある日、「生産者不足のため、10年後には青森りんごの生産量が80%減少する?」という衝撃的な事実を知ったことをきっかけに、地元・青森に貢献したいという想いを強くする。
さらに、「海外ではりんごからレザーを作っている」という情報を耳にしていよいよ、「青森出身の人間として、これは黙っていられない」という使命感に駆られた。
その結果、「アップサイクルでサステイナブルな未来を創造する」というビジョンを掲げ、事業をスタートさせたのだ。
こうして、「地域貢献」への熱い想いを胸に走り出した事業。
現在では、全日空が特別塗装機「ANA Green Jet」のヘッドレストカバーにRINGO-TEXを採用するなど、大手企業からの引き合いも多く、共創の輪は確実に広がりを見せている。
ANA機内のヘッドレストカバーに採用されたRINGO-TEX
しかし、一つの疑問が浮かぶ。
たとえ社会課題の解決や地域貢献という大義が背景にあったとしても、それだけで本当に他社が賛同し、ビジネスに結びつくのだろうか。
「社会課題解決×ビジネス」に注目が集まる
「単に物を売って儲ける、という話ではないんです。もし単純に売上を伸ばすことだけが目的なら、私たちと協力するよりも、各自で商売した方が効率的ですから」
ここ数年、社会課題を解決しながらビジネスとしても利益を上げようという気運が高まっているという。
現に、藤巻さんの取り組みを支持する企業や、レザーを活用したビジネスを行う事業者など世界中から支援が寄せられている。
当然そこに至るまでの道のりは、容易なものではなかったという。
製造に協力してくれる工場を探すために100本以上の電話をかけ、さらにその上で、ビジョンを共有し理解してもらうためにお酒を飲み交わし夢を語らい、時間をたっぷりと費やした。
少しずつ良好な関係性を築き、「青森の危機的状況をなんとかしたい」「藤巻さんを応援したい」そう言ってくれる人たちの想いと技術を集約し、今に至っている。
「私たち1社だけの力でなく、日本全国に散らばる私たちのビジョンに共感してくれる皆さんの技術を集約して、RINGO-TEXは作られているんです」と藤巻さんは笑顔を見せる。
これは、社会課題の解決やSDGsといった「大義」に確固たる意義があれば、相手がスタートアップや中小企業であっても、対話に応じる大手企業が増えていることを意味している。
インパクトスタートアップにとって、追い風が吹き始めている状況といえるだろう。
「エシカルと知らずに手に取っていた」が理想
「エシカル」は直訳すると「倫理的」と表されるように、「良いもの」であることはまず間違いないといえるだろう。
しかし一方で、どんなに良いものであっても、製品自体に価格以上の価値を感じられなければ手に取ってもらえない。
要は、「良いものだとはわかるけれど、高くて買おうとまでは思わない」のだ。
社会課題に取り組みながら、製品の質の向上にも努める
この課題について藤巻さんは、「いつの間にか手に取っていた」が理想だと話す。
大手企業や代理店と積極的にタッグを組み、まずはマスで攻めていく。
人々はそれをエシカル製品だとか、RINGO-TEXだとかは知らずに手に取り、使っている状況を目指すのだという。
「RINGO-TEXが自然と生活に溶け込んでいて、ふと『これって何だろう?』と調べてみたらエシカル製品だった、と。そこでappcycleやRINGO-TEXのことを知ってもらう。押しつけるのではなく、良いものを作ることと地球環境を守る取り組みの両輪で回していく。これが重要だと思っています」
東北は宝の塊 ビジネスチャンスが無数に転がっている
さらに藤巻さんは、東北の埋もれた資源について触れ、
「東北は物質的な面でも、人材的な面でも資源が豊富で、まさに宝の塊です。その魅力を上場企業や社会に提案していけば、まだまだチャンスがあります」と話す。
チャンスの一例として、海の資源が挙げられるという。
近年、地球環境や社会に配慮して作られる「エシカルジュエリー」が注目されており、同社ではこの一つとして、ホタテなどの貝を再利用した合成皮革の開発を検討している。
また人材に関しては、東北には優れたスキルを持つ人材が多いにもかかわらず、一歩踏み出す勇気を持てない人も少なくない。
そうした人材を発掘し背中を押すことで、社会全体の利益に繋がるはずだと藤巻さんは強調する。
廃棄リンゴという地域課題に着目してつくられるRINGO-TEX
野菜や果物の残渣処理や農業の担い手不足などは、東北をはじめ地方の課題としてかねてから問題視されてきた。
地域課題を解決しより良い社会を実現すると共に、それを経済的な成長に繋げるビジネスモデルに注目が集まる今、東北にはチャンスが無数に転がっている。
「地元・青森のため」を原動力にひた走る藤巻さんの取り組みがより大きな花を咲かせ、東北発ディープテック企業のロールモデルとなることに期待したい。
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