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『CONNECT+』Vol.13:特別インタビュー

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掲載日:2025年5月30日

現代アートが価値の再定義を促す

クリエイティブ・ハブが作る地域の未来

弘前市の文化・芸術・交流の拠点として2020年に「弘前れんが倉庫美術館」が開館した。100年以上前に建てられた酒造工場から生まれ変わり、開館から5年でコレクションは180点を超える。

そのコレクションの1号は弘前出身である奈良美智氏の『A to Z Memorial Dog』。ニューヨーク近代美術館やロサンゼルス現代美術館に作品が所蔵されるなど、世界で活躍するアーティストの一人だ。また、写真家であり映画監督としても活躍する蜷川実花氏の作品も収蔵されている。

 

さらには展示だけでなく、交流や学びの場を提供し、“創造の交差点”として地域文化を育んでいる。その仕掛人は木村絵理子館長、日本を代表するキュレーターでもあり奈良氏、蜷川氏からの信頼も厚い。

 

地域住民が日常の中で新たな感覚や視点に出会える場を提供するクリエイティブ・ハブとしての機能を果たす、この美術館の役割とは一体何だろうか。

 


弘前れんが倉庫美術館外観

 

美術館の本当の役割

美術館は作品を「飾る」ためだけの場所ではない――弘前れんが倉庫美術館は、その常識を覆す。「文化の保管庫」であると同時に「文化を動かす場」。だからこそ、ここには熱がある。

 

現在187点あるコレクションは、これからも増えていく予定であるという。だが重要なのは数の話ではなく、どんな“物語”をそこに託すか。木村館長は言う。「美術館の収蔵品は市民の財産。それは今だけでなく、100年後のこの町の人たちへの贈り物でもある」と。

展覧会、トークイベント、ラーニングプログラム――すべてが、“文化を体験する”ための設計だ。建物そのものもアート。100年前の酒造工場の面影を残しながら、時代の感性に応える空間は、訪れる人の五感に響く。

 

この美術館は、市民との協働によって成長している。地域の歴史と文化を土台にしながらも、現代的な価値観と表現が交わることで、場所そのものが“生きたアート”になっているのだ。

 

建物が建設されている当時の様子 写真提供:福嶋家

 

『意味のイノベーション』が起こる場所

ここで出会えるのは、“わかりやすさ”ではない。“考えるきっかけ”だ。現代アートの魅力は、答えが一つではないこと。違和感を提示し、視点をずらし、自分自身と向き合う時間を与えてくれる。

 

「現代アートは、固定観念に風穴を開ける存在です」そう話す木村館長の言葉には、アートへの深い愛と信念がにじむ。まさしく、『固定観念に風穴を開ける!』は今の経営に絶対的に必要な事である。だからこそ、この美術館は、経営者や学生、アーティスト志望の若者たちが集まる“学びの場”にもなっているのではないだろうか。

 

激動の変革期にある今、視点を変えた「問い」によって価値を再定義していくことは、事業を継続していくために必要不可欠。だが、日常のなかでこの感覚を得るのは難しいと感じる経営者は多い。経営者には、この現代アートを五感で感じることによって視点を変え、自社の価値を考えるきっかけにしてほしい。

 

弘前れんが倉庫美術館は、“観る”だけでなく“考える”場でもある。参加型のワークショップなど多様なプログラムは、来館者に「主体性」という種を植える。アートは自分の中にある答えを引き出す装置なのだ。

未来をつくるのは、「正解」を知っている人ではなく「問い」を持ち続ける人だ。弘前れんが倉庫美術館は、そんな人を育てる土壌でもある。

 

ジャン=ミシェル・オトニエル《エデンの結び目》2020年 Photo: ToLoLo studio

 

美術館は儲からない!

「公的機関である公立の美術館は、金銭的価値とは異なる価値を生み出す場所である」と話す木村館長。文化施設の多くが直面させられている“採算性”の壁を、ここは新たな仕組みで越えようとしている。

 

PFI(官民連携)方式による運営は、行政だけでなく民間のアイデアと資金を取り入れ、持続可能な文化施設の姿を模索するためにつくられた制度だ。さらに、ふるさと納税による作品寄贈など、行政と一体となって地域に還元される仕組みづくりに取り組んでいる。

「文化は利益では測れない。でも、社会を豊かにする資本である」――そう信じる人たちが、この仕組みに集まり、支えている。持続可能な文化運営の実験場として、美術館は次なる公共の形を目指す。

 

この挑戦の先にあるのは、「美術館がいかにして地域の新たな資源となるか」という壮大なビジョン。弘前れんが倉庫美術館は、地域コミュニティと文化の架け橋として、そのモデルケースになろうとしている。

 

[参考図版]さとうりさ《本日も、からっぽのわたし #3 (月と心臓)》2024年
越後妻有里山現代美術館MonET 展示風景

 

地域の文化の中心へ

「ここから、世界へ」。木村館長の目は、すでに未来を見据えている。開館5周年記念展『ニュー・ユートピア──わたしたちがつくる新しい生態系』は、その意思を象徴する展示だ。津軽の風土と人々の営みが交錯する作品群は、「文化の生態系」という新たな概念を提示している。

 

国内外の先進的なアーティストたちによる多様な作品によって構成され、この場所ならではの展覧会を作り上げている。文化と自然と歴史。それらが融合するこの町のポテンシャルが、アートを通じて立ち上がる。

 

教育機関や地域団体との連携も活発だ。市民参加型のプログラムが地域に根を張り、「見る人」のみならず「つくる人」にもつながっていくだろう。10年後、ここから羽ばたいたアーティストが世界を舞台に活躍する。そんな未来が、すでにこの美術館の空気には宿っている。

 

弘前れんが倉庫美術館は、単なる“場所”ではなく人が育つ場となっている。現代の経営において、アート思考や創造性は欠かせない。弘前で育った子どもたちは、新しい価値を創出する経営者になる可能性を秘めている。

 

奈良美智《A to Z Memorial Dog》の前にて
左からトークネット太田・木村館長・トークネット赤城

 

 

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