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『CONNECT+』Vol.20:地域企業の突破口

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掲載日:2026年5月29日

地域企業の突破口
~共創からはじまるInnovation~

「共創」は企業にどんな変革をもたらすのでしょうか。

地域企業が成長し続けるためには、異なる企業や産業の枠を越えて「共創」し、新しい価値を創出することが求められます。

「地域企業の突破口」では、東北の企業や自治体の先端共創事例を特集していきます。

 

CASE19 場づくりで地域に新しい動きを

まちの起爆装置は、映像会社

地方の映像制作会社と聞いて、ここまでの広がりを想像できるだろうか。

秋田市に拠点を置く株式会社アウトクロップは、東北ニュービジネス大賞「地域創生大賞」や全映協グランプリ最優秀賞・文部科学大臣賞などを受賞し、ドキュメンタリーや広告の映像制作の分野で確かな実績を築いてきた。しかし、この会社の異質さはそこにとどまらない。ミニシアターの運営、さらには宿泊・カフェ・コワーキングを備えた複合拠点「Atle DELTA」の展開まで──その活動領域は映像という枠を軽々と越えている。

映像をつくる会社が、なぜまでつくるのか。その問いこそが、この会社の本質に迫る入口になる。

 

         2024年5月にオープンした複合施設『Atle DELTA

 

埋もれた価値を掘り起こす

その原点は、一本の自主制作ドキュメンタリーにあった。

創業者で代表の栗原エミル氏と松本トラヴィス氏は、大学卒業を前に「秋田を離れる前に一本映画をつくろう」とカメラを回した。題材は伝統野菜。そこで彼らは気づく。秋田には、まだ誰にも知られていない物語が無数に眠っているという事実に。

「自分たちが映像にしなければ、世に出ないかもしれない価値がある」

その気づきは、地方で起業するという意思決定へとつながった。多くのクリエイターが都市へ向かうなかで、あえて秋田に残るという選択。それは不利ではなく、役割として捉えた逆転の発想だった。

実際、創業初期の仕事は農家のPR映像制作だった。展示会で流すための映像をつくり、販路拡大を支援する。地味だが、確実に価値を可視化する仕事だ。

ただし、彼らは単なる受託制作会社ではない。どんな案件でも引き受けるのではなく、「それは本当に必要か」「どんな思いに応える仕事なのか」を見極めながら選んできた。

だからこそ、アウトクロップの仕事には一貫した芯がある。
 
それは、まだ言語化されていない価値を、社会に接続するという役割だ。

 

          長編ドキュメンタリー映画『イネとカゼ』の撮影風景

 

前向きな勘違い

きっかけは、建物のオーナーからの何気ない一言だった。
 
「中にオフィス構えない?」──当初は、その一室を借りる程度の話だったという。

だが、その前提を彼らは少しだけ違う角度で受け取った。

「一室貸すぐらいの話だったんですけど、そこをちょっとプラスに捉えちゃって」

そこから話は一気に膨らんでいく。
 
「こういう場にしたい」「こんな人が集まったら面白い」──次々と語られる構想は、やがて一室を越え、フロア全体へ、さらに宿泊・カフェ・オフィスを抱える構想へと広がっていった。

外から見れば大胆な事業拡張に映るが、彼らにとっては無謀な挑戦というより、いい勘違いを起点にした自然な延長だったのかもしれない。

ただし、この展開は偶然だけでは説明がつかない。

映像制作を続けるなかで、彼らはある限界に直面していた。映像は地域の魅力や課題を可視化できる。しかし、それだけでは地域の課題そのものに踏み込みきれない。自分たちだけで完結できることにも限界がある。

だからこそ必要だったのが、人が集まり、交わり、何かを一緒に企てられるだった。

Atle DELTAは、複合施設をつくること自体が目的だったわけではない。
計画より先に必要があり、戦略より先に縁があった。

その延長線上に、この拠点が立ち上がっている。

 

          Atle DELTA1階に構えるコーヒーハウス『マチノミナト』

 

  

ここから、何かが動き出す

秋田にいながら、全国の起業家や学生と交わる。Atle DELTAでは、そんな風景が少しずつ日常になりつつある。

Atle DELTAでは、実際に人と人が交わることで、新しい動きが生まれている。

起業支援イベント「AKISTA PITCH」や高校生向けの合宿型プログラム「DELTA ACADEMY AKITA」など、全国から起業家や学生が集まるプロジェクトも展開されている。しかし、そこで生まれる動きは外から持ち込まれるものばかりではない。

地域の内側からもまた、新しい芽が育っている。象徴的なのが、同社が企画した「秋田をつなぐ100の仮説ワークショップ」だ。地域で感じている違和感や課題意識を、まだ答えになっていない仮説のまま持ち寄り、共有する。完成された意見ではなく、言い切れない問いの段階から言葉にしてみることで、次の取材や映像、共創の種が見えてくる。

Atle DELTAは、単に人が集まる場所ではない。
 
地域の内側の問いと、外から来る刺激が交わり、次のアクションが生まれる装置になっている。

 

           高校生向けの合宿型プログラム「DELTA ACADEMY AKITA」の様子

  

地方の原石を、世界にひらく

秋田に根を張りながら、その視線は秋田、東北、日本にとどまらない。

アウトクロップの強みの一つは、国際教養大学出身というバックグラウンドに象徴されるバイリンガル環境とグローバル感覚だ。社員12人の中,英語が喋れるバイリンガルが9割。海外留学を経験し、多様な文化に触れてきた彼らにとって、地方にいることは閉じることを意味しない。

実際、同社は海外での映像制作や国際的な展開も視野に入れ、グローカルな活動を続けている。映像制作で外貨を稼ぎ、その収益を地域での挑戦に再投資する。
 
その循環が、次の拠点やプロジェクトを生み出していく。

ここにあるのは、「地方か、都市か」という二項対立ではない。地方を足場にしながら、世界へと接続していく。その両立こそが、これからの時代のスタンダードになり得る。

地方には、まだ掘り起こされていない価値がある。
アウトクロップの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

   

          取材時の様子
          (写真左から)トークネット中畑、アウトクロップ栗原代表、アウトクロップ松本氏、トークネット太田

  

インタビューの全編動画はYouTubeで公開中!
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