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『CONNECT+』Vol.18:地域企業の突破口

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掲載日:2026年2月6日

地域企業の突破口
~共創からはじまるInnovation~

「共創」は企業にどんな変革をもたらすのでしょうか。

地域企業が成長し続けるためには、異なる企業や産業の枠を越えて「共創」し、新しい価値を創出することが求められます。

「地域企業の突破口」では、東北の企業や自治体の先端共創事例を特集していきます。

 

CASE18 眠るラボがビジネスを動かす

世界が注目する眠る”宝の山”

毎月、全国から「このラボを使いたい」「こんな実験をしたい」という相談が数十件、金額にして億円規模で集まってくるスタートアップが、仙台にある。

株式会社Co-LABO MAKERが手がけるのは、大学や企業に眠る高額な研究設備やラボ、人材をシェアする研究版Airbnb”ともいえるプラットフォームだ。
全国300件以上のラボ、5,000件を超える研究機器・技術が登録され、累計750件以上のマッチングを生み出している。

ラボを持たない企業や研究者が、時間単位〜数カ月単位で設備やラボ、人材を活用できる一方で、設備提供側である大学や企業は、眠っていた資産から収益や新たな連携機会を得られる。
このユニークなモデルは、どのようにして生まれたのか。その歩みをたどっていく。

 

シェアリングサービスの仕組み

 

壁は内側から壊す

前例のないラボシェアリングの仕組みを、なぜ大学も企業も受け入れ始めているのか。研究設備を共有するという発想は、一見すると大学や企業にとってリスクにも映る。安全性、知財、機密保持——慎重にならざるを得ないテーマだ。にもかかわらず、Co-LABO MAKERには全国の研究室・企業ラボが次々と参加している。その背景には、「内側の人間だからこそ壊せる壁」がある。

古谷代表は、東北大学で材料系の研究に没頭し、その後は大手メーカーで半導体材料の研究開発を担当、企業のR&D現場も深く知る人間だ。だからこそ、大学の研究者には研究者の言葉で、企業の担当者には事業やリスクマネジメントの文脈で、「設備をシェアする意味」を語ることができる。古谷代表は「同じ内容でも、相手によって翻訳して伝える」ことの重要さを繰り返し語る。

外から「変えましょう」と迫るのではなく、当事者の感覚を深く理解したプレーヤーが、内側からルールや仕組みを組み替えていく——この構図こそ、業界の住み分けを超えるための重要なヒントだと言えるだろう。

 

古谷代表

 

研究者が立てた、研究者の拠点

「むしろ研究しかしていたくなかった」——古谷代表は自身を、そう表現する。

幼少期から研究者だった父の背中を見て育ち、東北大学では人工筋肉から放射線系まで、複数の研究室で材料研究に打ち込んできた。修士課程時代には、環境次第で研究成果が「10倍変わる」ことを体感した。一方で、大手メーカー在籍時には、「自分が本当にやりたい研究ができない」というジレンマも強く感じた。社内にも大学にも、高価な設備が山ほどあるが、プロジェクトの枠を超えた実験には使えず眠っている。

この「余っているのに、使いたい人には届かない」という不合理こそが、Co-LABO MAKER創業の原点だ。古谷代表は在職中からビジネスコンテストに挑戦し、企業内で眠る設備をシェアするアイデアで最優秀賞を受賞。そのまま退職し、2017年に起業へ踏み出している。

いま、Co-LABO MAKERの周りには、大学や企業の研究者が自然と集まりつつある。「研究者がつくった、研究者のためのプラットフォーム」という空気感は、外部の事業会社がつくるサービスとは明らかに違う。研究者同士の信頼感は、「あの人が言うなら」「あの研究室がやっているなら」という形でじわじわとネットワークを広げていく。

これはどの業界にも通じる示唆だ。専門職の世界を動かしたいなら、まずは内側出身のハブを立て、その人を起点にコミュニティを雪だるま式に育てていく。その設計を意識できるかどうかが、変化のスピードを大きく左右する。

 

  

地方企業こそチャンス

いま脚光を浴びるディープテックだが、そのの多くは都市圏ではなく、地方大学のキャンパスにひっそりと眠っている。

近年、スタートアップ界隈ではディープテックがトレンドとして語られるが、その原石となる技術やシーズは、決して東京のど真ん中だけに集まっているわけではない。むしろ各地方大学や公的研究機関に、高度な技術や独自のノウハウが眠っている。しかし、研究費や人材、産業界との接点といった環境が十分でないために、芽が出る前に埋もれてしまうケースも少なくない。

Co-LABO MAKERは、そうした地方発の技術と企業をつなぐ「回路」をつくろうとしている。東北大学をはじめ、全国の大学と覚書を結び、研究シーズをオンライン上で公開・マッチングする仕組みを構築。企業は地域を問わず、「こんな分野の技術を探している」というニーズを投げかけることで、地方大学の研究力にアクセスできるようになりつつある。

これは、地方企業にとって大きなチャンスだ。自前で研究所や専任の研究者を抱えることが難しくても、「どの大学と、どのラボと組めばいいか」が見えるようになれば、一気に選択肢は広がる。重要なのは、「うちには研究部門がないから無理だ」と諦めるのではなく、「どの地域の、どのパートナーと組めば実現できるか」という問いに言い換えることだ。環境さえ整えば、人材やアイデアは地方にも眠っている——その前提に立てるかどうかが、これからの地方企業の競争力を分けていく。

  

研究の民主化で100社上場へ

「こんな素材つくっているところ、どこかにないかな?」——その一言から、新規事業は動き出す。

インタビューの中で、古谷代表はこんなシーンを想定している。新しい事業をつくりたい地方企業が、「こんなことを研究しているところはないか」「こんな素材を試したい」と思っても、自分たちだけで適切な研究室や技術者を探すのは至難の業だ。そこでCo-LABO MAKERに相談すると、「その内容なら、この大学のこのラボが近そうです」と、研究の料理人を紹介してもらえる。将来的には、蓄積されたラボデータや実験履歴、マッチング実績をもとに、AIが「この課題ならこのラボ・この技術が近い」とレコメンドする世界も見据えているという。研究者に直接アクセスするのではなく、まずはCo-LABO MAKERに「夢のような話」をぶつければいい——そのハードルの低さこそが、研究の民主化の実態だ。

研究開発は、もはや一部の大企業だけの専売特許ではない。問いを持つ企業や個人が、必要なときに必要なだけ研究リソースを借りることができるようになれば、「試してみたい」を起点に新規事業を立ち上げるプレーヤーは格段に増える。そうした挑戦の先に、古谷代表は「今後10年でコラボメーカーの利用企業から100社の上場企業を生み出す」という未来図を描いている。

経営者にとって重要なのは、すべてを自社内で抱え込むことではなく、「どんな問いを投げるか」「どこに相談するか」を設計することなのかもしれない。



  

取材時の様子
(左:トークネット 菅原 中央:株式会社Co-LABO MAKER 古谷代表 右:雑談会議 稲垣)

  

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