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『CONNECT+』Vol.20:特別インタビュー

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掲載日:2026年5月29日

 希望の火花が世界を照らす

世界が熱望する夜空

夜空に咲く数秒の光が、なぜ世界を動かすのか——日本最高峰の舞台「大曲の花火」で複数部門を制し、土浦、やつしろ、えべつなど全国有数の競技大会で、優勝・最優秀賞・特別賞など、合わせて数十に及ぶ賞を重ねる。その舞台は国内にとどまらず、カナダ・モントリオールでは約7000発の花火を打ち上げ、観客を圧倒するスケールで国際大会でも高い評価を獲得。タイでは王女臨席の国際会議で演出を担当し、ラスベガスの国際大会にも日本代表として出場するなど、日本の花火文化を体現する存在として、その評価は国境を越えた。秋田県大仙市・大曲に拠点を構える響屋大曲煙火。表現と技術の両面を更新し続けてきたその先で、その花火は「Fireworksではない、HANABIだ」と評され、世界中の現場で呼ぶ声が絶えない。だが、その評価にとどまることなく、「さらに大きな空へ」と挑み続ける。縮む国内市場、技術の継承——地方産業が抱える課題は、花火の世界も例外ではない。それでも世界から呼ばれ続ける秋田の花火会社は、伝統と革新をどう両立させてきたのか。響屋大曲煙火の挑戦に迫る。

 

              韓国・第20回釜山花火大会

  

火種は海の向こうから

響屋の始まりは明治26年。そこから120年以上にわたり大曲で花火づくりを続けてきた。その流れを大きく変えたのは、2017年の国際花火シンポジウムだ。世界各国の関係者が集まる中、「このHANABIを自国で打ち上げたい」と海外からのオファーが相次いだ。しかし、その期待に応えることはできなかった。寄せられた英語のメッセージは翻訳で対応するものの、契約や条件といった具体的な話に進むと手が止まる。ビジネス英語も、輸出や制度の知識もなく、どのやり取りも次第に途切れていった。「求められているのに、届けられない。」——その現実を前に、すぐさま本格的な海外展開に向けて準備を始め、一から体制を組み直していく。言語や制度の壁を一つずつ乗り越えながら、これまでになかった領域に足を踏み入れていった。目指したのは単なる自社花火の輸出ではない。日本各地の花火を束ねて海外へ届けるハブとしての役割だ。人口減少で国内市場が縮小していく中で、産業をどう残し、どう外に広げていくのか。その問いに対する、ひとつの答えでもあった。

 

             ミリ単位の手仕事である花火玉制作の様子
             https://www.oomagari-rc.jp/cn1/hibikiya.html

  

空白への投資

「逆に時間があったので、チャンスだと思った」と齋藤代表は振り返る。コロナ禍で花火大会は相次いで中止となり、仕事は次々と白紙になっていった。業界全体が停滞する中で、響屋は手を止めなかった。むしろ、その時間を次の一手を仕込む期間に変えた。花火の輸出には厳格な法規制があり、ライセンス、輸送、安全基準といった要件を一つずつクリアしていく必要がある。先の見えない状況で、利益も生まれない。それでも、ライセンス取得や体制整備を進め、海外展開を見据えた工場の増設にも踏み切った。しかし、売上が立たない中で投資を続けるのは、容易な判断ではない。それでも進めたのは、国内市場の縮小と、海外からの需要という現実が見えていたからだ。やるかやらないかではなく、どうやるかだけを考えた。そして2024年、輸出から打ち上げまでを自社で完結する体制が整う。7年かけて積み上げてきたものが、ようやく一つの事業として形になり動き出した。

 

人と技術を混ぜる

伝統を守るだけでは、続かない。響屋には、全国から「花火に関わりたい」という人材が集まってくる。異業種からの転職者や海外人材の採用も進めている。それでも見ているのは、その先の変化だ。人がいる今のうちに、次の形をつくる。技術と人の再設計は、そのための取り組みだ。花火づくりには、効率化できる部分と、人の手に残る部分がある。演出設計はAIやプログラミングで大幅に効率化されている一方で、色の変化や芯入りといった細かな技術は、いまも職人の手でなくては実現できない。すべてを機械に置き換えるのではなく、どこを残すかを判断することで、日本花火ならではの表現の質を守っている。組織のあり方も同じだ。入社1年目でもアイデアを出し、ベテランがそれを形にするという、発想と職人技の往復の中で、新しい表現が生まれていく。人か技術かではない。その両方が重なり合うところに、新しいものづくりのかたちが生まれている。

  

           最新鋭のコンピュータ点火機で、“忘れられない感動”を設計する

  

花火と火花

同じ火薬でも、使い方によって生まれる価値はまったく異なる。本来、破壊にも使われるその火薬を、夜空を彩るものへと変える。この発想は理念にとどまらず、事業の方向性そのものに組み込まれている。「火薬は平和に利用しなければならない」——齋藤代表が幼いころから教えられてきた言葉だという。世界で戦争や紛争が続いている今、花火は平和な場所でしかあがらないという前提が、この事業の意味を示している。人が集まり、同じ空を見上げる時間と空間があって初めて花火は成り立ち、花火を届けるとは単に商品を売ることではなく、その場を生み出すことに近い。響屋がつくりだす空間は、次の需要や関心を生み、日本への来訪や新たな機会へとつながっていく。守るものを見極め、変えるものを大胆に動かす。その繰り返しの先に、時代を渡る力が生まれる。伝統を問い直す眼を、あなたは、そしてあなたの会社は持っているだろうか。

 

         (写真左から)トークネット太田、響屋大曲煙火株式会社代表・齋藤健太郎氏、トークネット中畑

 

 

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