『CONNECT+』Vol.3:特別インタビュー

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掲載日:2024年3月25日

「地方こそ共創が強みになる」
~人気ユーチューバーの視点から~

「株式会社OGATORE(オガトレ)」は、宮城県気仙沼市を拠点とするヘルスケア・テクノロジー企業。ヘルスケアに関連する商品やサービスを展開するほか、動画配信の企画制作等も行っている。

代表取締役の尾形竜之介さんは理学療法士であり、YouTubeチャンネル登録者数140万人超えの人気ユーチューバー「オガトレ」として全国的に知られる有名人だ。尾形さんが地元企業と取り組んでいる共創プロジェクトや、ユーチューバーになったきっかけと地元・気仙沼への思い、動画という手法の可能性について語ってもらった。

「地元企業との共創で商品開発」

株式会社OGATOREは、「ご自愛してくださいね」でつながる世界へ、という企業理念を掲げ、ヘルスケア領域でエンドユーザー向けに信頼性のある情報発信や商品開発等を手がけている。これまでにGoogleやユニクロ、森永製菓といった大手企業と協業を実現してきた。中でも、宮城県の企業との共創プロジェクトには、強いこだわりを持って取り組んでいる。

その一例が、気仙沼市で水揚げされたカツオを用いた「フィッシュプロテインバー かつお たんぱっくん」だ。気仙沼は、生鮮カツオの水揚げ日本一の産地。刺身やわら焼きはよ く食べられているが、カツオを使用した加工品は多くない。タンパク質やアミノ酸等、栄養が豊富な食材でありながら、一般にその良さが伝えきれていないという課題があった。

そこで、尾形さんはフィッシュプロテインバーを作ることを思いつき、地元の老舗かまぼこメーカー2社がタッグを組む「三陸フィッシュペースト株式会社」と商品開発に着手。半年以上の試作・改良を重ね、高たんぱく・低脂質・低糖質・低カロリーという理想的なフィッシュプロテインバーを完成させた。パッケージデザインは、気仙沼のデザイン事務所「pensea(ペンシー)」に依頼。食べた後も破棄されず、手に取ってくれた人たちの思い出に寄り添えるといったこだわりを詰め込んだ。地元企業がヘルスケア、海産物加工、デザインとそれぞれの強みを活かし、異業種の共創によって新たな商品を生み出すことができたのだ。

OGATOREでは、自愛の言葉になぞらえて「Gi(ジーアイ)」というブランドを2021年4月に立ち上げ、ストレッチとの相性が良く国内製造・高品質にこだわった商品を開発。自社の通販ECサイト等で販売している。
 
 

根底にある地元・気仙沼への思い」

今や登録者数140万人超えの人気ユーチューバーとなった尾形さんだが、社会人としてのスタートは地元の公立病院の理学療法士だった。様々な患者さんと向き合う中で、目に留まったのが子どもたち。自然の中で遊ぶためかケガが多く、病院までの距離も遠いためにすぐに治療に来られない実情を目の当たりにした。

「ケガや病気の予防に、ストレッチが活かせないだろうか?」と思い立った尾形さんは、子どもたちが目にしやすい動画を活用することを考えた。しかし、公務員の立場で副業はできない。そこで、公立病院を退職し、ユーチューバーになる道を選んだ。当然のように周囲からはとても反対されたが、決意は揺るがなかった。

動画配信を始めると、厳しい現実が待っていた。YouTubeは登録者数が1000人いなければ収益にならないと言われる世界。当初の再生回数はわずか50回と、全く話にならなかった。約4か月間、毎日動画を配信し続けて、ようやく入ってきた収益は1日に換算するとわずか90円。志だけでは食べていけないため副業可能な民間企業に就職し、日中は会社員として8時間勤務して、勤務時間外に8時間YouTubeを撮影する生活を続けた。

「地元で頑張ろう」と語っていたYouTube仲間の多くは、地元を離れて東京でユーチューバーとして活動するようになった。東京にいるほうがノウハウを得られたり、情報発信にスピード感があったりして、チャンスは多いかもしれない。しかし、動画配信を始めた動機を考えると、東京に出ていけば説得力がなくなってしまう。気仙沼にいる ことで、地元企業との協業がしやすいというメリットもある。そして、2011年3月に東日本大震災が発生した際、専門学校に通っていたため地元にいなかったことに対する心残りもあった。地元への思いから、“気仙沼在住のユーチューバー”というアイデンティティーが確立されていった。

動画配信をスタートして約1年後、登録者数10万人を達成。月100万円程の収益が入るようになり、ユーチューバーとして生活できるようになった。コロナ禍による“おうち時間”の増加も追い風となった。これまで個人事業主として活動してきたが、2020年7月に株式会社OGATOREを設立。起業の背景には、活動が忙しくなり1人ではマンパワーが足りなくなっていたことや、社会的な立場がまだ弱いユーチューバーではなく代表取締役の肩書が必要だと感じていたことがある。また、気仙沼では学校を卒業した多くの若者が、就職のために地元を離れて戻って来ないという現状がある。「一度、地元を離れても、戻ってきて起業できるぞと、背中を見せたい思いもありました」と尾形さんは笑顔で語った。
 
 
 

「動画の可能性とブランディング」

人材が流出し、経済が縮小しているこの時代に、地方が生き残るためには何が必要なのか。地元・気仙沼で挑戦を続ける尾形さんは、「経営者としては駆け出しなので…」と謙遜しつつ、YouTubeチャンネル登録者数140万人超えのインフルエンサーとしての立場からこう指摘する。「フォロワー=ファンは可能性です。増やしていくことは簡単ではありませんが、増やすための努力を惜しまないことが大事なのです」。

国内における18歳以上のYouTube月間ユーザー数は、2023年5月時点で7120万人を突破し、若年層に限らず幅広い世代で利用が進んでいるという。急成長しているこの市場には、自社の新たなファンとなり得る可能性が広がっている。地方において新たなファンを獲得するためには、場所を選ばず活用できる動画やSNSを活用しない手はない。

尾形さんの発信力を期待して、宣伝を依頼してくる企業も多いが、そうした“企業案件”の大半は断っているという。動画というツールの特性上、表情や声色に人柄が滲み出ると尾形さんは考えている。本当に価値があると思っている商品でなければ、自身の発信力だけを頼りに紹介しても、ファンには見抜かれてしまうだろう。

「ストレッチを広めることに繋がる共創的な協業であれば引き受けますが、お金のための協業はしません。目的から外れることはしない、そういうブランディングが大事です」。

自身で決めた筋を通す誠実さと、地方にいることをアドバンテージに変えていく発想力と行動力が、今なおファンを増やしている秘訣ではないだろうか。

尾形竜之介さんプロフィール

宮城県気仙沼市生まれ。専門学校卒業後、理学療法士の資格を取得。公立の急性期病院にて6年間、脳外科・整形外科等のリハビリに従事する傍ら、トレーナーとしてインターハイや国民体育大会へ同行。その後、訪問リハビリやフィットネスジムの責任者を経て、ユーチューバーとして活動。「体が硬くて困っている人をゼロにしたい」を信念に動画を配信。 

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