『CONNECT+』Vol.12:特別インタビュー
- 地域活性化・地域課題解決
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掲載日:2025年3月24日

理想をビジネスにする奇才
―Creating Paradise: The Perfect Blend of Welfare and Business―
視察料15万円
「企業視察料15万円」と聞いて驚く人もいるかもしれない。日本国内はもちろん、台湾、韓国、スイス、ブラジルなど世界中から視察者が訪れる施設となったことで問い合わせが殺到し、本業に支障をきたすほど。「このままでは仕事にならない」という理由で付けられたのが15万円という金額だった。
それほどに注目を集める複合施設が仙台にある「アンダンチ」。この施設を運営する「株式会社未来企画」の福井大輔社長は、「福祉事業にビジネスの視点を取り入れ、地域課題を解決する仕組みを創りたい」のだという。この想いに隠された、ビジネスモデルの緻密なロジックを紐解いていく。
多世代交流の魔法
この複合施設 アンダンチには、介護施設、高齢者住宅、保育園、飲食店、そして就労支援事業が一体となり、地域住民が自然と集まり交流できる環境が整っている。週末にはレストランに100人以上が訪れ、駄菓子屋で働く障がい者と高齢者、そして来訪する子どもたちが笑い合う光景が広がる。
「施設内で完結する暮らしではなく、地域との繋がりを持てる暮らしを作りたかった」と語る福井社長。一般的な福祉施設に見られる柵や門はなく、木造2階建ての建物が点在する。敷地いっぱいに建てたくなりそうなものだが、建物同士を結ぶ道は湾曲し、遊びを残す。中央には、土管のトンネルがある築山とヤギ1頭が暮らす小屋が配置され、さながら公園のよう。サ高住には暖炉が設置され、冬は薪の香りと火の暖かさに包まれる。「遊びのない場所に暮らしていて、幸せなのか?」―――この問いこそが、温もりあふれる空間を生み出した。
一見すると無駄に見える全てが必要なものとして成り立っている世界。経済合理性を追求する昨今では考えられない判断ではあるが、そこが成功の重要ポイントであった。
「アンダンチ」の敷地マップ
奇跡が生まれる瞬間
アンダンチの特徴は、異なる事業が互いに補完し合い、相乗効果を生むビジネスモデルにある。しかし、よくある普通の相乗効果を狙ったビジネスとは入口が全く違う。福井社長は「利用者に良いサービスを提供したい」「カフェを地域住民から喜ばれる大人気店にしたい」などといった一つ一つがビジネスとして本気で向き合った先にある相乗効果の捻出なのだ。施設の課題や社会課題に向き合いながらも妥協しない福井社長が生み出した桃源郷だからこそ、施設研修が後を絶たず来る者の心を打つのだ。
例えば、高齢者住宅の清掃を障がい者が担当することで、障がい者には就労機会を提供、高齢者には日常的な交流の機会を創出。さらには、介護士が専門的な業務に専念できるという効果も。また、大人気カフェの食事を施設に提供することで、施設利用者は健康的で美味しい食事を毎日食べることができ、カフェはさらなる売上増加に繋がる。
相乗効果を最大化するよう緻密に設計された仕組みだからこそ、あらゆる要素が結びつき新たな価値が生まれる。ビジネス的な観点だけでなく、地域課題の解決にも貢献していることが、この施設の凄さである。
複数の事業を組み合わせることには、相乗効果以外にも、リスクを分散し収益の安定を図るという目的もある。福井社長は、このビジネスモデルを「地域課題を解決し、持続可能な未来を創る道具」と考えているのだ。
日常的に世代を超えた交流が生まれている
理想の原点 ケニア
福井社長のバイタリティーの片鱗は学生時代にあった。アフリカやアジアなど約20カ国をバックパッカーとして旅し、ケニアのスラム街で子どもたちと過ごした経験を持つ福井社長は、スラム街で物質的な貧しさの中でも助け合いながら生きる人々や、笑顔に満ちた子どもたちとの交流で「繋がり」の本質を学んだ。その経験から、孤立しがちな現代社会の中で、この「繋がり」を日本でも再構築したいと考えるようになり、それが彼の福祉事業の原動力となっている。
驚くべきことに、当時スラム街で出会った子どもが立正大学を卒業し、現在は未来企画で働いているという。そんなことがあるだろうかと思う人も多いであろう、まるで映画のようなストーリー。福井社長は「繋がりを大切にすれば、人生が豊かになる」と信じ、その信念を事業で体現している。
学生時代の福井社長(ケニアのスラム街)
福祉業界の当たり前
福井社長の前職は、鉄を扱う商社マン。「お客さんの“背中のかゆいところを探せ”」という先輩の教えが、福祉事業にも活きているという。「介護施設のホームページがないのはなぜ?」「スタッフに名刺がないのは普通?」そんな疑問を抱きながら、福祉業界の“当たり前”に挑戦してきた。異業種での経験が、福祉業界の課題解決に革新的な視点をもたらしたのだ。
ビジネス視点を福祉事業に取り入れることについて、「福祉はあらゆる人に必要なものですが、ビジネスとして収益性がなければ持続可能な運営はできない。だから収益性の追求も欠かすことができない」と福井社長は語る。
日々、地域住民や利用者の声を拾い上げ、それを事業に反映させる姿勢を大切にしている福井社長。「地域課題を解決しながら、持続可能で温もりのある未来を創りたい」という彼のビジョンは、業界の枠を超えた普遍的な価値を持っている。
課題を見過ごせない挑戦者
福井社長の話を聞き、“福祉”にとどまらない挑戦者としての姿が見えてきた。地域住民、多世代、さらには海外の人々を巻き込みながら、ビジネスは進化を続けている。
「10年後には、地域の人々が『アンダンチがあって良かった』と思える存在になることが目標」と語る彼。その言葉の裏には、人と人を繋ぎ、温もりある未来を作りたいという強い意志が感じられる。
アンダンチの複合型ビジネスモデルは、福祉施設の枠を超えた新しい地域共創の形だ。地域の課題を解決し、多世代が共に生きる場を創り出す挑戦ともいえるだろう。未来企画は、地域と共に挑戦を続けながら、次世代の社会モデルを示す灯台となっていくに違いない。
左から、未来企画 福井社長・トークネット赤城・太田・國井
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