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『CONNECT+』Vol.15:特別インタビュー

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掲載日:2025年9月5日

クラフトサケをメディアに、拡大する街

創業3年で6.5億円を調達

秋田県男鹿市。県内で最も人口減少が深刻な「消滅可能性都市」であるこの町で、ある企業の挑戦が静かに、そして着実に注目を集めている。

「稲とアガベ株式会社」は、創業からわずか3年という短期間で累計6.5億円もの資金調達を実現。「SAKE AWARD」初代優勝、酒屋大賞3位&FERMEX特別協賛賞のW受賞など、 “日本酒ではない”という立ち位置ながら、業界の名だたる酒蔵と肩を並べ、堂々と評価されたクラフトサケメーカーだ。しかし、彼らを単なる酒造メーカーとして捉えるのは早計だろう。レストラン、宿泊施設、食品加工、蒸留所と、その事業領域は多岐にわたる。


これからの未来に町を残すには「文化」が必要だ。酒は単なる嗜好品ではなく、土地の風土、作り手の思想、そして地域の歴史が詰まった総合芸術であり文化そのもの。彼らを先駆者として町に新興酒蔵が集えば、それは町の文化となるだろう。


クラフトサケを起点とする稲とアガベの取り組みは、酒を“地域のメディア”として男鹿の土地と深く結びつけ、その魅力を世界へ向けて発信している。稲とアガベの急成長、そして男鹿市の活性化を導いてきた、岡住社長の思想と戦略を紐解いていく。

 


様々な種類のクラフトサケの醸造・販売をおこなう

 

空白の街に火を灯す

岡住社長は謙虚に、しかし力強く、地道に歩みを進めてきた。
クラフトサケをより楽しんでもらうため、レストラン「土と風」を開店した。さらに、製造過程で生じる酒粕は「発酵マヨ」などの食品加工に活用して価値に変えている。

そのように一歩ずつ進んでいく先に想像もしない出会いがあり、様々な人が手を貸してくれたという。それを象徴する例が、大手ラーメンブランド「一風堂」と共に発足した「男鹿ラーメンプロジェクト」だ。ラーメンを通した地域課題の解決に挑む一風堂の想いと、男鹿の町を盛り上げようとする岡住社長の想いから、この異色のコラボレーションが実現した。

2023年8月には、共同開発したラーメンを提供する「おがや」をオープン。地元住民で行列をなす人気店となっている。その勢いは男鹿に留まらず、翌2025年2月には東京で凱旋イベントを開催するほどの成功を収めている。

目の前の物事に、1つずつ、そして一生懸命に取り組む岡住社長。その着実な歩みが、男鹿に足りない「空白」を埋めていき、今も町の魅力を高め続けている。

 

一風堂とのコラボから生まれたラーメン店「おがや」の「男鹿塩ラーメン」

 

「記憶に残る町」をデザインする

岡住社長が重視するのは、旅人が地元の人々と触れ合い、心温まる交流を通じて得られる「体験の質」だ。それを偶然の産物にせず、意図的にデザインすることで、景色ではなく人との出会いで記憶に残る町が生まれている。

旅先で交わした会話、ふとした場面での笑顔、顔なじみのスタッフの存在。そうした「人の温度」を感じられる接点が、旅の記憶を色づけ、リピーターを生み出す強力な要素となる。

例えば、スナック「シーガール」では、地元の人々が観光客に地域のおすすめを教えたり、奢ってあげたりするような交流が生まれている。これは、観光客が単なる消費者としてではなく、男鹿のファンとして再訪したくなるような、感情的な絆を育むことに他ならない。

表面的な観光資源の整備に終わらせず、人と人との関係性を築くことが持続的な地域の活性化に繋がる。この連鎖を生み出し、男鹿の町を未来に残すため、岡住社長は今日もどこかで誰かと話している。

 

「稲とアガベ株式会社」は酒だけではなく町をつくる

 

1%が町を動かす

岡住社長は、自分一人で全部やろうとしない。それどころか、「人を口説くのが僕の仕事」と言う。
男鹿出身ではない彼の元には、なぜか銀行、大手企業、さらには多くの支援者までが自然と集まってくる 。そこには、多様なステークホルダーに対して「関わる理由」を創出するからくりが存在する。

三菱地所との連携では、男鹿で「わたしたちのまちづくりサミット」を共催。この取り組みが学生たちの間で「地域貢献に積極的」という評価に繋がり、結果として三菱地所の採用活動にまで好影響を与えたという。

岡住社長の「やれることは全部やる」という姿勢は、彼自身の行動力の源であると同時に周囲の人々を感化し、共に行動するモチベーションを生み出している。彼の存在が、男鹿という小さな町に多様な人々が関わる理由を与え、新たな共創の輪を広げているのだ。

「1%でもいいので力を貸してほしい」この言葉が象徴するように、彼には周囲を巻き込む圧倒的な力がある。
人との出会いの中で、一緒に何かができるというアイデアが生まれれば、その「1%」を呼びかける。この小さなスタートが、結果として10%から30%、それ以上の大きな力に変わり、男鹿を動かす原動力となっている。

 

利他がビジネスを加速させる

「どうせ死ぬから利他であれ」
岡住社長の原動力の根底にあるのは、このシンプルな信念だ。

彼にとって、死ぬそのときまで命を燃やすことこそが最大限に満足した生き方であり、それゆえ「人のため」という視点に貫かれている。
人のためにやることで、自分が本当にやりたい人生に近づいていく。自己実現のための利他的な精神こそが、岡住社長のすべての行動を突き動かす根源的な力だ。

2050年までに消滅すると言われるほどの人口減少に直面する男鹿で、個人の力だけでは不可能だからこそ人を巻き込み、みんなで遠いところを目指そうとしている。廃業した店舗の再生も、高値で米を買い取ることも、すべては地域を豊かにし、人々が笑顔で暮らせる環境を創出するためだ。地域にチャレンジする人たちが増えることで、男鹿が未来に残っていくと信じている。

彼の哲学は、単なる慈善活動ではない。利他こそが、持続可能なビジネスと豊かな人生の中心であり、町に新たな推進力を生み出すエンジンでもある。

町が変わり、人が動き、未来への道が切り拓かれていく──。「稲とアガベ」の挑戦は、人と町の関係を再構築し、地方に眠るビジネスの可能性を掘り起こすローカルモデルである。

 

左から、トークネット太田・稲とアガベ 岡住社長・トークネット若生・トークネット菅原

 

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