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『CONNECT+』Vol.21:特別インタビュー

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掲載日:2026年7月3日

 地域と対話する23歳が、岩手から日本を変える

地方に現れた“昭和型”の異端児

岩手県一関市で、今ひときわ熱量を放つ若者集団がいる。

経済産業省・農林水産省系プロジェクトへの採択。 一関信用金庫や自治体との連携。さらには河合塾グループとの教育連携まで――。ここまで聞けば、都内の大企業を想像するかもしれない。だが、その中心にいるのは、一関高専発のローカルスタートアップ「株式会社Next IWATE」だ。同社は、地域企業や自治体に対するDX支援や情報発信支援、人材育成事業などを展開しながら、地域課題の解決に伴走する事業を手がけている。 代表を務める上野裕太郎氏は、まだ23歳。学生起業家という肩書きだけを見れば、“若さ”や“勢い”が先行したベンチャーにも映る彼らの強さは、もっと別のところにある。 彼らは派手な資金調達や急拡大を語る前に、地域を歩き、人に会い、話を聞き、信頼を積み上げる。そのやり方は驚くほど泥臭い。

この“普通じゃない学生起業”の正体は、一体どこにあるのか。見えてきたのは、地方で挑戦を成立させるための、ある徹底した思想だった。

 

          社内会議の様子。メンバーのほとんどが現役高専生。

  

地域を歩くデジタル屋

上野代表は高専時代、細胞研究分野を専門とし、論文発表の実績や学会受賞の経歴も有する“スーパー研究者コース”の学生だった。累計論文数は10本以上。さらにロボット研究や医療系自動化システム開発でも成果を残し、経産省系プロジェクトでは全国上位の評価を獲得している。

しかし、その華々しい経歴とは裏腹に、現在の事業スタイルは驚くほどアナログだ。「泥臭く、1人でも多くの人と会う」その姿勢を徹底している。実際、地域のイベントには片っ端から顔を出し、名刺交換をした相手には自ら連絡を取り、「話を聞かせてください」と足を運ぶ。仕事の話だけでは終わらない。釣りに行き、飲みに行き、雑談を重ねる。その中で相手の悩みや地域課題を知り、“頼られる存在”になっていった。

スタートアップというと、スケール戦略や急成長モデルを思い浮かべる人も多い。しかし、彼らが最優先するのは、“信用”だ。普通なら弱みに見える「若さ」を、「教えてもらえる立場」として最大限活用する。地域の経営者たちからすると、彼らは“評論家”ではなく、“本気で地域に入り込んでくる若者”に見えただろう。だからこそ、信頼が生まれる。

実際、同社は解約率0%を維持しているという。理由はシンプルだ。単なる受託ではなく、“一緒にやる”からである。上野代表は「報告書を作って終わるコンサルはしない」と語る。SNS運用なら、外注ではなく“内製化”まで支援。地域事業者が、自分たちで動ける状態をつくる。
テクノロジーの時代に、なぜここまで昭和的なのか。だが逆に言えば、この“人間臭さ”こそが、近年の地方創生で最も不足していたものなのかもしれない。

  

         講演を行う 代表取締役CEO 上野裕太郎氏

  

思いのある人が、どこにいるか

高専生には高い技術力がある。しかし、研究やアイデアを社会に伝える力や、誰かと共創する機会は決して多くない。上野代表は在学中からその課題を早くから見据え、サイエンス教室の開催や地域活動を通じて、学生と社会をつなぐ場づくりに取り組んできた。活動を広げていく中で、自治体や企業からの相談が増えていった。地域に入り込むほど見えてきたのは、地方には、「やりたい」があっても、それを実現する人材や仕組みが足りていないという現実。逆に言えば、若者が入る余地が大量に残されていた。

そんな中、ドイツ視察である気づきを得たという。岩手の製品を世界のバイヤーに売り込む中で、相手が気にしたのは産地ではなく「Made in Japan」かどうかだけだった。都市か地方かなど、島国の中だけの話だったのだ。「結局、1番大事なのは、思いを持った人がどこにいるかだけ」。 都市か地方かではない。資本力でもない。“本気で地域を変えたい人”がいる場所に、人もプロジェクトも集まる。だから彼は、一関を離れなかった。

「岩手から日本を良くしたい」その言葉は、地方創生のスローガンというより、自分自身への覚悟に近い。

 

半デジタル化

地方DXに必要なのは、“最新”ではなく“定着”だ。Next IWATEの支援は、ここが徹底している。

世の中では、AIやDXという言葉が先行する。しかし地方の現場では、高性能なシステムを導入しても使われないケースが少なくない。彼らはそこを冷静に見ている。デジタル化だけが正解じゃない。だからこそ同社は、“半デジタル化”という思想を掲げる。

例えば、一関市と連携して行っている訪問型スマホ支援。普通なら公民館などに高齢者を集めて開催する。しかし彼らは逆だった。本当に支援が必要なのは、足腰が悪く、外へ出られない高齢者ではないか――。そう考え、学生たちが地域を回り、高齢者宅を訪問する仕組みをつくった。これは単なるスマホ教室ではない。高齢者の孤立防止。見守り。若者との接点づくり。デジタル支援を入口にしながら、“地域の関係性”そのものを再構築しているのである。

彼らが見ているのは、「システムを入れたか」ではない。“その人が使えるようになったか”そこに徹底的に寄り添う。だからこそ、地域に受け入れられている。

  

          高齢者向けスマホ教室

  

熱量は伝播する

Next IWATEが面白いのは、自社の成長だけを目的にしていない点だ。彼らが本当に目指しているのは、この地域に"共に創る人"を増やすこと。

そのために、まず「知ること」に徹底的に時間をかける。 リアルな家庭環境を知るために引っ越しアルバイトをする。農家の繁忙期にはコンバインに同乗しながらDXの話をする。普通のコンサルなら絶対にやらない。だが、彼らにとって一次情報は、机上調査より価値がある。地域の空気感、人の感情、暮らしのリズム――それを知らなければ、本当の課題は見えないと考えているからだ。

そうやって現場で出会った人たちと、少しずつ「一緒にできること」を形にしていく。教育機関、金融機関、行政、地域企業――。「一社で全部やる時代じゃない」と上野代表は言う。誰かが課題を抱えていたら、一緒に考える。誰かがやりたいことを持っていたら、一緒に動く。そのシンプルな積み重ねの先に、自然と"共に挑戦したい"という人たちが集まってきた。

地方に必要なのは、成功事例より、"挑戦していい空気"なのかもしれない。彼らの熱量は、じわじわと、確実に伝播している。

 

         内閣府主催のコンテストで共創パートナーとともに地方創生担当大臣賞を受賞

 

Next○○

「この地域を良くしたい」上野代表の言葉は、とてもシンプルだ。だが、その裏側には、“地方の未来を諦めない”という強い意志がある。

地方では、若者流出が語られ続けてきた。仕事がない。挑戦機会がない。ロールモデルがいない。だから都市へ行く。しかしNext IWATEは、
その流れ自体を変えようとしている。若者が地域に残る仕事をつくる。外から人が来たくなる挑戦環境をつくる。地域に、“熱量”を生み出す。

今後、彼らの取り組みは一関だけにとどまらないだろう。共創の輪は、他の地域にも広がっていく可能性がある。
だが、その拡大ですら、彼らは
スケールとは呼ばないのかもしれない。

地域に、本気で向き合う人を増やす。その結果として、未来が変わっていく。
Next IWATEは今、
“地方スタートアップ”という言葉の定義そのものを書き換え始めている。

  

        左からトークネット太田、株式会社Next IWATE上野代表、トークネット中畑、トークネット佐野

 

 

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